15:40-17:10イノベーションの理由:
資源動員の創造的正当化
京都大学 大学院経済学研究科 教授
武石 彰 氏
イノベーションはどのように生み出されるのか。こう問われた人の多くは、イノベーションの源となる革新的な技術やアイデアが生み出される過程に目をむけるかもしれません。しかし、イノベーションの実現には、(少なくとも)もう一つ重要な過程があります。革新的な技術が商品となり、事業化されるために必要な資源が投入されていく過程です。  本講演では、後者に目をむけ、大河内賞を受賞した日本企業の事例を題材にして、イノベーションが実現される過程とはどのようなものなのかについてお話しします。それは、革新的な技術の価値を多くの人々が一様に認める「客観的な経済合理性」によって理路整然と導かれる過程ではありません。社会を構成する人々や組織が価値観、事情、権限、影響力等において多様であることによって可能になる過程であり、イノベーションの実現を目指す者がその多様性に働きかけること ── これを「創造的正当化」と呼び、そこには大きく三つのルートがありうる ── によって実現される過程であると考えます。

※本講演は、2012年に出版された同タイトルの著書(青島矢一・軽部大氏と共著、有斐閣)のエッセンスをご紹介するものです。