10:00-12:00 宇宙原理と建築
日本建築学会 会長/ 東京工業大学 名誉教授 和田 章 氏
 熱力学の第二法則= エントロピー増大の法則は「宇宙は時とともに整然から混沌の方向へ進む」ことを説明しています。この原則に人間活動は逆らっているように見えます。例えば、高層建築の設計から建設などで技術者達は混沌から整然を作っています。しかし、これら人間活動にも外部から膨大なエネルギーが注ぎ込まれ、外部である地球や大気を汚し、全体としては混沌な状態をつくり、実はエントロピーは増えているのです。
 エントロピーを減少させ維持するためには、大量のエネルギーを外部から投入することと人間の知恵が必要です。知恵が生かされていない整然とした状態は小さな外乱で混沌とした状態へ向かってしまうのです。自然の原理により、すべてのものが崩れたがっている現実を受け止め、これらの現象を人間の知恵で守り支えなければ、安全・安心かつ豊かな社会を維持できないことを理解し実行しなければなりません。
 人はエントロピーが低く価値が高い所に興味をそそられ、そのようにして大都市の集中が生じているともいえます。反面エントロピーを増大させ混沌の状態に変化させることに快感を感じる面もあります。本講演では、『宇宙原理と建築』と題して、都市の形態、建築の寿命や私たちの生活スタイルが地球規模のエントロピーにどう影響しているか、その増大を防ぐにはどうしたらよいか、共に思考を巡らせる機会を創出したいと思います。